私たちは普段、「味」を舌で感じていると思いがちですが、実際には味覚だけで判断できる情報は非常に少ないことが分かっています。
一般的に味覚は、
- 甘味
- 塩味
- 酸味
- 苦味
(近年では「うま味」を加えて5つとされることもあります)

一方、嗅覚は約400種類もの匂いを識別できると言われています。この圧倒的な情報量の差こそが、私たちが感じる「繊細な味」の正体です。
なぜ舌だけでは味を判断できないのか
舌が感じ取れるのは「味の方向性」だけです。例えば、甘いか、しょっぱいか、酸っぱいかといった大まかな分類はできますが、
- 果物の種類の違い
- 焙煎度の違うコーヒー
- ワインの産地や熟成感
といった細かな違いを舌だけで判断することはできません。
ここで活躍するのが嗅覚です。食べ物を口に入れると、香りの成分が鼻の奥(後鼻腔)に抜け、脳がそれを解析することで「味」として認識されます。

例題①:鼻をつまんで食べてみよう
次の簡単な実験をしてみてください。
- 鼻をしっかりつまむ
- リンゴジュースとオレンジジュースを飲み比べる
多くの人は違いが分かりにくくなるはずです。甘味と酸味は舌で感じられても、「リンゴらしさ」「オレンジらしさ」は香りがないと判断できません。
これは、果物の個性が味覚ではなく、嗅覚によって識別されている証拠です。

例題②:風邪をひくと味がしなくなる理由
風邪や鼻づまりのとき、「何を食べても美味しくない」と感じた経験はありませんか?
これは舌の味覚が壊れているのではなく、嗅覚が正常に働いていないためです。
香り情報が遮断されると、脳は味を十分に構築できず、「薄い」「味気ない」と感じてしまいます。

料理・グルメが「香り」を重視する理由
プロの料理人やソムリエが香りを重視するのは、味覚よりも嗅覚のほうが記憶・感情・満足度に強く影響するからです。
- 焼き立てのパンの香り
- 炭火焼きの香ばしさ
- 出汁の立ち上る匂い
これらは舌で味わう前から「美味しそう」と感じさせます。つまり、美味しさは食べる前から始まっているのです。

まとめ:繊細な味の正体は嗅覚だった
私たちが感じる味の奥深さや複雑さは、舌ではなく鼻が作り出しています。
味覚はシンプル、嗅覚は膨大。この役割分担を理解すると、食事の楽しみ方も大きく変わるでしょう。
次に食事をするときは、ぜひ香りにも意識を向けてみてください。


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